- VOL.130 飯塚 護 さん 35歳
- 7年間軽貨物ドライバーとして大活躍し資金を貯めて、このたび新しい夢の実現へと向かうことを決意された飯塚さんにお話しをうかがいました。
-飯塚さんには以前、軽貨物を始めて2年目のころにインタビューにご登場いただいております(前回のインタビューはこちら)。改めて7年前に軽貨物ドライバーを始めた理由を教えてください。
飯塚さん当時一番困っていたことが2つありました。経済力がないということと、すごく方向音痴で地図が読めなかったということですね。その当時に持っている自分の能力の中で一番稼げる仕事として配達の仕事を探して、この仕事ならば方向音痴も直せるかなという期待もあって、この仕事を選びました。
-軽貨物のお仕事ということで、物流時代以外にも面接は受けましたか。
飯塚さん探さなかったですね。もうここ一社だけでした。東京の本社に面接に行って、お話を伺ったのですが、やりながらじゃないとわからないだろうなと思って、とにかく色んな条件も全部オッケーして、車をお借りして茨城に帰って仕事を始めた、という感じでした。
-軽貨物のお仕事を7年間続けることができた秘訣は何だと思いますか。
飯塚さん長続きする人と長続きしない人の違いは、能力よりも考え方と習慣ではないかと思います。続く人は、配達を「気合」ではなく「仕組み」で回します。逆に続かない人は、毎日を根性だけで乗り切ろうとして消耗してしまい無理が来てしまうのではないでしょうか。
-「仕組み」とはどんなことでしょうか。
飯塚さん私は次のようなことを意識して取り組んできました。1点目は「改善を小さく積み上げる」。最初から完璧を目指すのではなく、昨日よりも今日少しでも楽にするということです。2点目は「信頼を優先する」。結果的にクレームが減り、仕事が楽になります。3点目は「周りとの関係をWin-Winに保てる」。この仕事は、我慢大会にすると必ず限界が来ます。長く続けるなら「続けられる型」を先につくるのが大切です。
-昨日よりも今日少しでも楽にする、とはどんなことですか。
飯塚さん「配達の仕事を楽しむこと」が、一番大事だと思っています。配達は毎日同じようでいて、少しずつ良くしていける仕事です。「迷う回数が減った」「不在が減った」「お客様の反応が良くなった」みたいな小さな成功が、積み重なるほど楽しくなってきます。楽しむためのコツは、完璧を目指すよりも、昨日より1つだけ楽にすること。その繰り返しで、仕事が自然に回り始めると思います。
-信頼を優先することでクレームが減る、とはどんなことでしょうか。
飯塚さんお客様のことを理解することから始まります。在宅時間だけじゃなく、小さい子やご高齢の方がいるなどの家族構成、夜勤で昼間は寝ている、体調が悪そうなど様々なご事情などが、少し観察していると分かるようになります。お客様のことが分かると、相手に合わせた対応ができるようになります。例えば、元気よく挨拶して喜ばれるお客様もいますが、元気よくハキハキと話されるのを好まないお客様もいます。相手に合わせた対応をとると、信頼を得られるようになりますし、クレームをもらうこともなくなります。
-お客様を理解して、相手に合わせて対応することができるようなったのは何年目くらいですか。
飯塚さん最初のころは配達にいっぱいいっぱいで、なんでお客様が怒っているか分からないこともありました。3~4年経って、相手のことを理解しないとこれはやっていけないって思うようになり、自然と変わっていきました。
-「周りとの関係をWin-Winに保てる」というのは、隣のコースを走っている委託ドライバーさんや、同じエリアの社員ドライバーさんとの関係ということでしょうか。
飯塚さん主にはそういうことです。人間関係って結局Win-Winじゃないとだめなんですよね。自分だけ勝って相手が負けてもいけないし、相手が勝って自分が負けても続かないんですよ。ストレスなく続けていくためには、どっちも勝つことが大切なんです。
-具体的にはどんなことをされましたか。
飯塚さん新人のころは我慢して、できないですとか嫌ですとかと言うのは遠慮していた部分がありました。でもそうするとどんどん要求されるばかりで、すごくストレスだったんですね。これでは長続きしないと思いました。できないこと、無理なことはきちんと説明をするようにしました。そうしたら、そうだよね、とわかってくださるようになって。正しいことであれば断ってもいいんだなと思いました。
-初めて意見を言うときは、勇気要りませんでしたか。
飯塚さん勇気要りましたね。しどろもどろでした。けれど、社員さんが上手く受け取ってくださいました。うん分かった、みたいな感じで。言ってよかったって思いました。相手の方がどう言ってくるかを想定して、話の仕方や荷物の配分などの提案をして、Win-Winの関係になるように考えて、きちんと自分の考えを言うのが大事ですね。
-自分の要望を言うだけじゃなくて、相手の要望も想像しながら建設的なお話をするということですよね。
飯塚さんはい。普段の業務は与えられたものは必ずやらなきゃいけないですし、それを超えた分っていうイメージですね。普段の業務プラスこれできるかって言われた時にできること、できないことをちゃんと言うっていうことです。
-効率よく配達するために、回り方で意識されていたことはありますか。
飯塚さん効率の良い回り方を考えるのは基本中の基本です。ただ、スピードだけを追うより、「迷わない」「ミスしない」「確実に回る」の順で整えると、結果として早くなります。
-「迷わない」「ミスしない」「確実に回る」とは、例えばどんなことですか。
飯塚さん例えば、荷物探しに時間がかかるなら、戻った方がいい。荷物探しに時間がかかっているときって、焦って無理に続けるほどミスの確率が上がります。だから「見つからない」「怪しい」と感じたら、いったん戻って整理して、確実にした方が結果的に早い。無理に押し切ると、誤配や二度手間になって、後で何倍も時間を失います。
-体調管理について気を付けていたことはありますか。
飯塚さん私の場合ですが、夜に食べない方が睡眠の質が上がると感じています。遅くても16時までに食事を済ませておくと眠りが深くなり、翌日に疲れが残りにくい。睡眠が崩れると、判断ミスも増えるし、イライラもしやすくなります。「食事と睡眠を守る」だけで、仕事の辛さがかなり減ると思います。
-お休みの日はどんなことをしていましたか。
飯塚さん軽い運動を心がけていました。配達って体を動かす仕事に見えて、意外と運動不足になります。歩く量はあるけど、心肺や筋力は落ちやすい。5分〜10分でもいいからランニングを入れるのをおすすめしたいです。それだけで1週間の体の軽さが変わります。疲れにくくなるしメンタルも安定して、配達のパフォーマンスにも直結します。
-今月でこの仕事は卒業されて次の道へ進まれるとのことですが、いつ頃から次の道を意識し始めたのでしょうか。
飯塚さん振り返ってみると、無意識ではありますがやっぱり初めからだったんだなって思います。当初はおぼろげだったんですけど、経済力がないことと方向音痴を直して、35歳まで稼ごうと思っていました。
-実際に35歳が近づいてきて、どんなことをお考えになりましたか。
飯塚さん次に自分が目指す場所として、公認会計士を目指したいなと思って勉強を始めました。資格が取れたら軽貨物を辞めるというのがベストなタイミングなので、最初は配達しながら勉強できないかなと思いました。
-公認会計士は、相当勉強しないと試験合格できない大変に難しい資格だと聞きます。
飯塚さん配達しながらその合間にとても勉強する時間はなかったです(笑)。配達終わってクラクラの頭の中勉強してみたのですが、絶対無理だなと思って。これはもう辞めないといけないっていうことで、勉強に集中するために軽貨物の仕事を辞める決断をしました。
-大きな目標へのチャレンジですね。
飯塚さんチャレンジできるなと思うと楽しみでワクワクしています。
-夢を叶えるまでの生活も現実問題としてあると思います。ある程度稼いだから踏み切れるところありますか。
飯塚さんあります。これぐらいの金額あればしばらくは大丈夫だろうというくらいは貯まりましたので。普通の仕事をするよりは貯まったと思います。
-貯金できると感じるようになったのは、軽貨物を始めてどれぐらいからですか。
飯塚さん一年目はまだあまり個数を配れなかったので貯まるという感じはなかったのですが、二年目からですね。今のエリアになって荷物が多くなって、営業所の中でもトップ5に入るくらいの個数を配れるようになったのが大きいかもしれないです。これを続けていけば貯金できるなという感覚は出てきました。
-新しいチャレンジする上で、軽貨物ドライバーの経験で役に立ちそうなことはありますか。
飯塚さんやっぱりそれはもう信頼を大事に行動するってことですね。どんなことでも相手は必ず人なので、信頼してもらわないことにはまず始まらない。友人にしても家族にしてもまず信頼してもらわないと前に進まない、話が進まないと思います。7年間の配達で学んだことです。
-物流時代と契約しての7年間、どのようなサポートを受けてきましたか。
飯塚さん色々ありますが、ひとつ大きかったのは車両のレンタルですね。月額払う代わりに色んな面倒を見てくれるんですよね。タイヤ交換や車検のサポートしていただいたというのが大きかったです。車のことで心配しなくていいんだなあっていうふうに思ってました。
-事故などがあったときはどんな対応をしてもらいましたか。
飯塚さん車が側溝にはまってしまったことがあったのですね。電話したら、すぐに助けに動いてくださって。そういう車に関係するサポートは手厚いと思いました。自分が走っているのは、茨城なので遠いんですよ。東京の本社や埼玉の方から来ると思うので、申し訳ないなと思いながら。でもすぐ来てくれて助けていただいたことは何度もありました。事故を起こしてしまって、お相手の方への謝罪に行っていただいたこともありました。
-業務のことで相談に乗ってもらうことはありましたか。
飯塚さん仕事のことで言うと、人間関係の相談したことがあります。発注元の社員の方とどういうふうに接したらいいでしょうかと。そのころは私もまだWin-Winの人間関係に持っていくっていう発想がなくて。良い人もいるのですが、一部の方から強く言われるときもあって、ちょっとストレスだったわけです。そういうときに相談乗ってくれたのは大きいですね。困っているならこちらから発注元の方には強く改善を申し入れますよと言ってくださって心強かったです。
-飯塚さんがお仕事始められた7年前と今とでは、軽貨物を取り巻く環境はだいぶ変わったのではないでしょうか。
飯塚さんそうですね。まず大きな違いは、今って配達アプリっていうのがあって、そのアプリを使うとだいたい一ヶ月ぐらいで配達業務を習得できます。最近も、新人さんの研修をしたのですが、配達アプリを使うので、アプリがなかったころでは考えられないぐらいのスピードでどんどん上達していくわけです。私が始めた当時は紙の住宅地図しかなくて、覚えるまでに3カ月かかりました。なかなか覚えられなくて、クレームもたくさんもらいました。
-アプリの発達のほかにも、コロナ禍もありましたし、宅配ボックスの普及も進んだと思います。
飯塚さんお客様の理解が深まったと感じます。例えば、不在票を入れておくと電話が来ますよね。昔は、「今から出かけるので5分以内で来てください」とか。いったん他の配達を中断して対応してまた戻ってとかありました。でも今は、お客様がすごく理解をしてくれて、ドライバーに対して親身になってくれて。「この後ずっといますから今日中に来てくれれば大丈夫です」みたいな感じのお客様も増えました。宅配ボックスの設置も増えていますし、置配できるケースも増えてきました。
-7年間でどうしてそういうお客様の変化が起きたと思われますか。
飯塚さん軽貨物のニュースが増えたからだと思います。再配達問題であるとか、クレーマー問題であるとか。大変な仕事なんだなって理解してくれたお客様が増えたおかげで、新人さんにもやりやすい仕事になったと思います。
-これから軽貨物に挑戦しようと思っている方へメッセージをお願いします。
飯塚さん自分の経験を振り返ると、はじめは稼ぐというというところから入りました。でも、稼ぐだけをメインとすると続かないんですよね。これは仕事を通して人間関係を学ぶ修行、人と人は信頼で結ばれていることを学ぶ場だと思うようになりました。はじめは稼ぎたいからという動機で良いのですが、徐々にお客様の笑顔を見たいからとか、信頼関係を築くためにはどうしたら良いのかとか、考え方をアップグレードしていくといいんじゃないかと思いました。自分の成長のために、学びのためにこの仕事があるという考えに移行していくと、どんどん楽しくなるし、勉強にもなるし、好循環にもなるし、長続きすると思います。